Words by Yuto Suzuki
サポーター1人1人が、紙や旗、袋などを掲げ生まれるスタジアムの光景はコレオグラフィーと呼ばれ、ほんの一瞬で出現し消えていくその儚さと美しさは、まさにフットボールそのものではないでしょうか。COVIDの影響で一度は奪われてしまった光景も、状況が少しずつ良くなってきた今、サポーターによる素晴らしいアイディアを多くのフットボールファンは再び待ち望んでいます。
オリンピック・マルセイユ / France (2015/4/5 vs PSG)
リーグワン最大のダービーマッチ、マルセイユ vs PSGの「 Le Classique 」2015年4月5日に行われた一戦は世界167か国以上で放送され、世界中の人々は、キックオフ前から特別な光景を目にした。3つのスタンド前に吊るされた非常に長いテキストバナー、コレオグラフィーに必要であった4万9000枚の紙。マルセイユの8つのサポーターグループは、1週間かけてこのショーを作り上げたという。
浦和レッズ / Japan (2017/11/25 vs Al Hilal)
2017年、米FOXSPORTSによる「世界の熱狂的なサポータートップ5」に選ばれた浦和レッズのサポーター。同年のACL決勝で披露したビジュアルサポートは、まさにその選出にふさわしかったことを彼ら自ら証明した瞬間であった。バックスタンドで作り上げられたエンブレムと、ACLトロフィーの複雑な形を見事に表現した作品は、選手たちの闘争心を奮い立たせ、10年ぶりのアジアNo.1の栄光に貢献したのである。
ボルシア・ドルトムント / Germany (2013/4/9 vs Malaga)
22000人を収容できるゴール裏に、ユニフォームを着たサポーターがぎっしり詰まった光景は、俗に「黄色い壁」と呼ばれる。2013年UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)準々決勝2ndレグ、サポーターは大きなUCLトロフィーを形作り、望遠鏡を覗く男の旗とバナーを掲出した。バナーに書かれたメッセージは「失われた優勝カップを探して」。ドルトムントは1997年に欧州制覇をしており、再びそのチャンスがきたため、このようなメッセージを掲げた。
FCバーゼル / Switzerland (2018/12/9 vs FC Zürich)
FCバーゼルのウルトラスによる非常に独創的なショーが行われたのは2018年12月9日、国内最大のライバルであるFCチューリッヒとの試合前だった。このコレオは「赤」と「青」のレンズでそれぞれ見える姿、形が異なり、観客は巨大な横断幕に2つのメッセージを見ることができた。赤のレンズを覗くとバーゼルの選手がガッツポーズをして喜んでいる様子が、青のレンズを覗くと、ピッチに座り込み落ち込んでいる様子を見てとることができる。この年、クラブは125周年を迎え、サポーターは「良い時もあれば悪い時もある」というメッセージをコレオを通じて示したかったのだという。
ガラタサライ / Turkey (2014/10/18 vs Fenerbahce)
熱狂的なサポーターで知られるトルコの名門ガラタサライ。2014年、フェネルバフチェとのイスタンブール・ダービーで披露したのは、かつてクラブを指揮したスコットランド人監督、グレアム・スーネスの有名な瞬間を再現したコレオグラフィーだった。1996年、彼はチームが勝利を収めた後、宿敵であるフェネルバフチェのピッチ上センターサークルにガラタサライの旗を植え付けたのである。それ以来、グレアム・スーネスはガラタサライのファンにとって象徴的な存在となっている。